朝、サイトを開くと「この接続ではプライバシーが保護されません」と出る。前の晩に SSL 証明書の期限が切れていた。年に 1 回、カレンダーに書いて手で更新していたのに、今年は担当が替わってメモを引き継ぐのを忘れていた。
こうした「年 1 回の更新」のやり方は、これから通用しにくくなります。証明書の最長の期間が、決まった日付で段階的に短くなるからです。
証明書の最長の期間は、3 段階で短くなる
ブラウザーが信用する証明書の決まりは、証明書を出す会社とブラウザーの会社が集まる CA/Browser Forum が作っています。2025 年 4 月 11 日に、期間を段階的に短くする決議(Ballot SC081v3)が通りました。今の決まり(Baseline Requirements 2.3.1)では、発行した日ごとに次のとおりです。
| 発行した日 | 最長の期間 |
|---|---|
| 2026 年 3 月 15 日より前 | 398 日 |
| 2026 年 3 月 15 日から | 200 日 |
| 2027 年 3 月 15 日から | 100 日 |
| 2029 年 3 月 15 日から | 47 日 |
決まりがかかるのは「その日から発行した証明書」です。すでに入っている証明書の期限が、その日に縮むわけではありません。ただ、200 日の段はもう始まっています。
計算すると、200 日なら 1 年に少なくとも 2 回、100 日なら 4 回(365÷100=3.65)、47 日なら 8 回(365÷47≒7.8)の更新が要ります。
あわせて、証明書を出す前の「このドメインの持ち主か」の確認を使い回せる期間も、200 日(2026 年 3 月 15 日から)、100 日(2027 年 3 月 15 日から)、10 日(2029 年 3 月 15 日から)と短くなります。メールや DNS の設定でその確認を人がしているなら、その手間も増えます。
いちばん困るのは、手で更新しているサイト
有料の証明書を買い、サーバーの管理画面に手で貼り付けている。ドメインの確認のメールを、毎回だれかが開いて押している。こうしたサイトは、100 日の段に入ると 3 か月ごと、47 日の段では毎月、同じ作業が回ってきます。
回数が増えると、休み・担当の交代・引き継ぎの漏れで 1 回抜ける機会も増えます。1 回抜ければ、そのまま期限切れです。
手で更新しているなら、2027 年 3 月 15 日より前に、自動で更新する形へ移す段取りを決めておくと楽です。使っているサーバー会社に、証明書を自動で更新する機能(ACME という仕組みを使うものが多い)があるかを、まず確認してください。
保守を受けている制作の人は、お客さまのサイトごとに「証明書はだれが、どこで、どう更新しているか」を一覧にしておくと、抜けが見えます。証明書はお客さまが別の会社で買っていて、入れ替えだけ頼まれている、という形は特に危ない所です。更新の時期をどちらが覚えておくかを、契約や引き継ぎの紙に 1 行書いておくと、担当が替わっても残ります。100 日の段に入る前に、その形のサイトから自動の形へ移す相談を始めておくと、作業が年に何回も重なるのを避けられます。
自動更新でも、止まっていることに気づきにくい
自動更新にしてあっても、安心しきれない場面があります。
- サーバーを移した、DNS の向き先を変えた、配信を速くするサービスを使い始めた。
- 守りのために、確認用の URL(/.well-known/acme-challenge/ など)を .htaccess や WAF でふさいでしまった。
- 更新に失敗したお知らせが、前の担当者や制作会社のメールアドレスに届いている。
どれも、ふだんはサイトが問題なく開けるので、期限が切れるまでだれも気づきません。期間が短くなるほど更新の回数が増え、そのぶん失敗が起きる機会も増えます。
ドメインの期限も、同じ形で切れる
証明書と並んで忘れやすいのが、ドメインの期限です。多くは 1 年ごとの更新で、支払いのカードの期限が切れていた、登録の会社からのお知らせが使っていないアドレスに届いていた、という形で止まります。
ドメインが切れると、証明書が有効でも、サイトもメールも届かなくなります。証明書の自動更新も、ドメインの確認ができずに止まります。
期限を監視する方法
手で見るなら、ブラウザーのアドレスの横の鍵のマークから証明書の期限を開けます。ただ、47 日の段になると、月に 1 回見るだけでは間に合わないことがあります。外から毎日、期限を調べて知らせてくれる道具を使うほうが確かです。
その 1 つとして、システマが作っているサイトビーコンでも、登録したサイトの SSL とドメインの期限を 1 日 1 回見ています。無料のプラン(2 サイトまで)でも使え、SSL は残り 30 日(自動で更新される短い証明書は 14 日)、ドメインは 30 日前・7 日前・当日に、メールで知らせます。
今日やっておくこと
持っているサイトの証明書を 1 つ開き、発行の日と期限、更新が自動か手かを確認してください。手で更新しているなら、2027 年 3 月 15 日より前に自動の形へ移す相談を、サーバー会社か制作会社にしておくと、次の段に慌てずに済みます。
参考にした決まり
- CA/Browser Forum「Ballot SC081v3」(2025 年 4 月 11 日に投票の終わり)
- CA/Browser Forum「Baseline Requirements」(1.2.2・4.2.1・6.3.2)